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骨格筋インスリン抵抗性における新しい調節メカニズムの解明


■関連リンク(こちらもご参考にどうぞ)■
骨格筋のインスリン感受性調節における血管内皮細胞のインスリンシグナルの役割の解明
インスリン抵抗性に対する膵β細胞の代償メカニズムの解明

 【はじめに】
 2型糖尿病は、この40年間で約40倍に増加し、現在我が国では890万人の患者がいるといわれております。この原因として、食事の欧米化や車社会による運動不足に起因する肥満に伴うインスリン抵抗性(インスリンが効きにい状態)の増大と、それに対して膵臓からのインスリン分泌がこれを十分に代償できないことが一因と考えられています。
従って肥満に伴うインスリン抵抗性、特に骨格筋はインスリンによる糖取り込みの最大の臓器であり、骨格筋におけるインスリン抵抗性のメカニズムを明らかにすることが、2型糖尿病の予防や治療として重要であると考えられます。インスリンが骨格筋に作用し糖取り込みをするためには、血中のインスリンが毛細血管の血管内皮細胞を通過して骨格筋間質に移行しなければなりません。そして肥満では、この血中から骨格筋間質へのインスリンの移行が低下していることが知られていましたが、それがどのようなメカニズムで起こっているかは不明でした。

【研究結果】
 我々はこの分子メカニズムに血管内皮細胞のインスリンシグナルが重要な働きをしていると考え、血管内皮細胞の主要なインスリン受容体基質(IRS)2に着目し1)、血管内皮細胞でのみIRS2を欠失させたマウスを作製し解析しました。
このマウスでは、血管内皮細胞のIRS2欠損の結果、インスリンによるeNOS活性化が障害され、毛細血管の拡張障害、間質インスリン濃度が低下することにより、骨格筋のインスリン依存性の糖取り込みが障害されたと考えられました。

そこでeNOSのmRNAを上昇させることが知られているプロスタグランジンI2アナログであるベラプロストナトリウムをこのマウスに投与したところ、毛細血管の拡張の改善に伴い骨格筋の間質インスリン濃度が回復し、インスリン依存性の骨格筋における糖取り込みが改善しました。
そこでより一般的なインスリン抵抗性モデル動物である高脂肪食肥満モデルマウスを用いて同様の結果が得られるかどうか検討を行いました。このマウスでは血管内皮細胞において高インスリン血症によりIRS2の発現が低下し、インスリン刺激によるeNOSの活性化が低下していました。
またこのマウスでは、インスリン投与後の骨格筋における毛細血管の拡張障害に伴う間質インスリン濃度の増加に有意な障害が認められ、それと一致して、インスリン依存性の骨格筋の糖取り込みも障害していました。さらに高脂肪食肥満モデルマウスにベラプロストナトリウムを投与すると、毛細血管の拡張の改善に伴い骨格筋の間質のインスリン濃度が回復し、インスリン依存性の骨格筋における
糖取り込みが改善しました。このことより、血管内皮細胞のインスリンシグナルが骨格筋のインスリン感受性調節に重要な役割をしていることが明らかとなりました2)。

【今後の展開】
 これらの結果から、健常人では、空腹時血中のインスリン濃度が低いため血管内皮細胞のIRS2の発現が十分に維持されています。そのため摂食後インスリン濃度が上昇すると、血管内皮細胞のインスリンシグナルが十分活性化され、毛細血管の拡張に伴い骨格筋の間質のインスリン濃度が上昇し、インスリン依存性の骨格筋における糖取り込みが起こると考えられます。しかし、肥満者では、空腹時から血中のインスリン濃度が高いため、血管内皮細胞のIRS2の発現が低下してしまいます。摂食後、インスリン濃度が上昇しても血管内皮細胞のインスリンシグナルが活性化されず、毛細血管の拡張が起こらないために間質のインスリン濃度が増加せず、インスリン依存性の骨格筋の糖取り込みが障害すると考えられます(図)。従って、血管内皮細胞のIRS2の働きやインスリンシグナルを活性化するような薬剤の開発が、あらたな糖尿病治療薬となりうると考えられます。

関連研究論文
1) Kubota T et al. Lack of insulin receptor substrate-2 causes
progressive neointima formation in response to vessel injury.
Circulation. 107: 3073-3080, 2003
2) Kubota T et al. Impaired insulin signaling in endothelial
cells reduces insulin-induced glucose uptake by skeletal
muscle. Cell Metab. 13: 294-307, 2011


ニュースレター「健康・栄養ニュース」第10巻1号(通巻36号)平成23年6月15日発行から転載


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作成:2011-7-14 16:39:28 sakura   更新:2011-7-14 16:47:40 naoko   閲覧数:11497


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